不動産投資コラム

神奈川アパート投資|築年数だけで判断しない、修繕履歴の見方

アパート経営
2026.06.01

神奈川県は、東京都に次ぐ全国2位の人口を抱え、特に横浜・川崎エリアを中心に高い賃貸需要があります。2026年(令和8年)の公示地価からも、都道府県別の変動率(住宅地)で神奈川県は前年比プラス3.4%を記録するなど、資産価値の底堅さが読み取れます。また、地価の上昇に加え、建築資材や人件費の増加から物件の建築価格も高騰しています。

こうした市場環境において、新築物件の価格高騰を背景に注目を集めているのが、中古アパート投資です。神奈川県内の主要駅から徒歩圏内にあるような好立地の中古物件は、新築物件と比較しても高い利回りが期待でき、賃貸需要からも安定した稼働率が見込める魅力的な収益物件となり得ます。

築年数の古いアパートを投資先に選ぶ場合、利益を出せるか負債を抱えるかは、単純な築年数だけでは判断できません。確かに新しい物件ほど物件状態が良く空室リスクが低そうに思えます。しかしそれだけでなく、「物件がしっかりと管理・修繕されているか」という修繕履歴を見ることもポイントです。適切にメンテナンスされてきた物件は、築年数以上に高い収益性を維持し、将来の出口戦略でも有利に働くことが期待できます。

この記事では、アパート投資における収益物件の修繕履歴の見方を解説します。

出典:国土交通省「令和8年地価公示 43-1変動率と地点数」

築年数だけで投資判断をしてはいけない3つの理由

投資先のアパートを選ぶ際に、「古い物件は入居者から敬遠されそう」という理由だけで優良物件を候補から外してしまうのはもったいないです。ここでは、築年数だけで判断してはいけない理由を3つ紹介します。

1.「物理的寿命」と「経済的寿命」は一致しない

木造アパートの法定耐用年数は22年です。しかし、法定耐用年数は税務上の減価償却の目安であり、建物そのものの物理的寿命とは一致しません。そのため、築古であっても適切な計画修繕を行うことで、長く住める物件として維持しやすくなります。

2.メンテナンス不足による「負の連鎖」のリスク

修繕が放置された物件は、外装の劣化や設備の不具合が発生し、入居率の低下や家賃の下落を招きます。これにより修繕資金がさらに不足し、修繕ができず物件価値が落ちていく「負の連鎖」に陥りやすいです。その場合、適切に修繕されていない物件は、築年数が浅い物件であっても資産価値が落ちるスピードが早まりやすい傾向があります。逆に、修繕履歴がしっかりしていれば物件価値が維持され、このリスクを回避しやすいでしょう。

3.築年数が短くても、将来的な修繕の見通しは必要

建物の設備は、短いものでは5〜10年ほどで修繕周期が訪れます。さらに15年ほど経過すると取替えが必要な設備も出てきます。たとえ築年数が短くても、近いうちに訪れる修繕に向けて、どのような準備が必要かを見通しておく必要があります。

修繕履歴とは?

修繕履歴とは、建物が建築されてから現在に至るまでに実施された、修繕・改修の内容を記録した書類のことです。具体的には、以下のような情報が記録されています。

  • 工事の部位・箇所(外壁、屋根、給排水管、各専有部など)
  • 実施時期(年月)
  • 工事費用(施工金額)
  • 施工業者名
  • 工事の内容

修繕履歴を確認することで、「過去に雨漏りが発生した際、どのような補修をいくらで実施したか」「給排水ポンプはいつ交換されたか」といった、外観からでは判別できない建物の内部状態を把握することができます。計画的にメンテナンスを行う計画修繕が実施され、それが記録されている物件は、劣化の進行が緩やかになり、資産価値を長く維持しやすくなります。これに対し、履歴が全く残っていない物件や、不具合が起きてから直す修繕しか行われていない物件は、見えない部分に欠陥を抱えているリスクが高まる傾向があります。

修繕履歴のチェックポイント

購入を検討している収益物件の修繕履歴をチェックする際、注目すべきポイントをまとめました。

屋根

屋根の塗装や防水機能が劣化すると、雨漏りが発生する恐れがあります。屋根の防水は、12〜15年周期での実施が目安です。

外壁塗装

ひび割れやチョーキング現象、タイルの浮きなどが発生すると、雨水が内部に侵入したり、見た目を損なったりします。12〜15年周期での修繕・塗り替えが目安です。

鉄部

階段・廊下・手すりなどの鉄部は、外にさらされているとサビや腐食が発生してしまいます。サビを放置すると、破損して重大な事故につながる危険があります。5〜7年を目安に塗装し直すことで、安全性・見た目の面でメンテナンスをしましょう。

給排水設備

生活インフラである水回りのトラブルは、入居者からの苦情につながりかねません。適切な補修が行われていないと、配管の詰まりや悪臭の原因になります。ポンプの補修は5〜8年(取替えは14〜18年)、貯水槽の補修は12〜16年が目安です。

室内設備

エアコンや浴室設備も日常的に使うもののため、修理は5〜10年、交換は11〜15年が目安とされています。交換時期が一斉に来ると修繕費用がかさむため、個別の交換履歴も重要です。

出典:国土交通省「長期修繕計画標準様式、長期修繕計画作成ガイドライン」
出典:国土交通省「計画修繕の進め方と国土交通省の取り組みの関係」の画像内「管理住宅管理評者向け計画修繕ガイドブック[PDF形式]」

神奈川エリア特有の地域リスクと修繕のポイント

神奈川でアパート投資を成功させるためには、一般的なチェックポイントに加え、神奈川特有の地理的条件を考慮した修繕履歴の見方が重要です。

湘南・海沿いエリアの塩害と高湿度

藤沢市・茅ヶ崎市・逗子市などの湘南エリアや、横浜・川崎の沿岸部は、人気が高い一方で、海沿い特有の潮風による塩害が建物を劣化させるリスクがあります。外に置かれている設備や鉄製の手すりなどが、通常よりも短いスパンで修繕が実施されているか、塩害に強い塗料や設備が採用されているかを確認しましょう。

横浜・川崎の傾斜地・擁壁

丘陵地が多い横浜・川崎エリアでは、坂道や傾斜地に建つ物件も少なくありません。坂道にある物件は、外壁塗装などの工事の際に特殊な足場架設が必要となり、通常よりも高くつくことがあります。過去の工事金額が相場より高い場合、その地形的要因により今後も修繕コストが増える可能性があることを認識しておきましょう。

また、敷地内に擁壁がある場合、崩落事故などが起きないようチェックやメンテナンスが必要です。ひび割れなどの劣化がある際には修繕に費用がかかります。

修繕履歴が出口戦略(売却価格)に与える影響

築古のアパート投資において、修繕履歴は単なる過去の記録ではありません。しっかりと見方を理解することで、取得後のキャッシュフローや売却価格(出口戦略)を有利にし得る重要な情報です。

物件状態が良く、安定運用できる物件としてアピールしやすい

神奈川は需要が安定しているため、築年数が経過しても適切に修繕されている物件は入居者がつきやすく、高く評価される可能性があります。物件状態が良く空室率の低い物件は、築古であっても安定した運用が見込めるため、買手がつきやすいでしょう。キャピタルゲインを狙うのであれば、自身で購入した後も適切に修繕を行い、それを記録することで次の買手にアピールしやすくなります。

買手側の融資時に評価される可能性がある

買手側も、収益物件を購入する際は金融機関から融資を受けることが多いです。その際には、金融機関がその物件の収益性を審査します。金融機関によっては、修繕履歴を物件の価値判断に活用することがあります。修繕履歴がしっかりと残されており、適切に維持管理されている物件と判断されると、審査の際にポジティブに捉えられることもあります。物件の価値を判断してもらう材料として、売主になる時を想定して修繕履歴はしっかりと残しておきましょう。

まとめ|修繕履歴からその収益物件の資産価値を見抜く

この記事では、アパート投資の修繕履歴について解説しました。修繕履歴は過去の記録を残したものです。しかしそれだけではなく、将来的に資産価値を維持できるかも見通す材料になり得ます。
人口が多く賃貸需要が安定している神奈川県において、築古アパート投資は、高い利回りと安定した需要が期待できる魅力的な投資先となり得ます。しかし、収益物件選びの指針となるのは、築年数という表面的な数字ではなく、収益物件の状態把握に有効な修繕履歴にあります。

修繕履歴からは「その物件の価値を維持するために、どのくらい手を施されてきたか」を知ると同時に、「メンテナンスにどれだけ手間と費用がかかるか」も把握できます。物件取得後の維持管理を疎かにしないためにも、修繕履歴はしっかりと見ておきましょう。

また、適切にメンテナンスされた収益物件は、単に入居率を高めるだけでなく、将来売却する際の出口戦略においてもメリットをもたらす期待が持てます。適切に修繕を行っている履歴は、買手に安心感を与えるだけでなく、金融機関に対しても評価されやすく、次の買手が融資を受けられやすくなるという強みにつながりやすいからです。

神奈川県内では、さまざまな条件の収益物件が存在します。その中から物件を選ぶ際には、「築年数が短いか・長いか」だけに惑わされず、修繕履歴から読み取れる「本質的な物件の価値」を見極めましょう。

他にも、不動産投資の基本について記事にまとめています。こちらもぜひご覧ください。

収益物件とは?種類と特徴、資金計画に関わる基礎知識から、物件選びのポイントを解説
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