神奈川アパート投資|採算ライン(損益分岐点)の計算方法

横浜や川崎といった活気あるエリアを持ち、また東京都心への良好なアクセスが魅力の神奈川県。人口が多く安定した賃貸需要があることから、不動産投資先としても注目されています。
しかし、人気エリアであるがゆえに、神奈川県の地価は上昇傾向にあり、収益物件価格も高くなりやすいです。物件価格が高くなる都市部では、利回りが圧縮されやすくなります。安定した不動産投資をするためには、よく使われる用語と数値を理解し、「数字を読む力」をつけることが不可欠です。
この記事では、不動産投資で求められる数字の考え方を理解できるよう、採算ライン(損益分岐点)、実質利回り、そして融資の指標とされるDSCR(借入金償還余裕率)について解説します。
不動産投資における採算ラインとは?
まずは、不動産投資における採算ライン(損益分岐点)と、関連する用語について解説します。
採算ライン(損益分岐点)とは?
不動産投資における採算ライン(損益分岐点)とは、物件運用で得られる「家賃収入」と、ローン返済や維持管理にかかる「総支出」が、ちょうどプラスマイナスゼロになる境界線のことを指します。
賃貸経営では、毎月決まった家賃が満額入ってくるとは限りません。退去による空室期間や、家賃の滞納などによって収入が減るリスクがあります。もし家賃収入が、この採算ラインを下回ってしまった場合、足りない支出分は自己資金から補填しなければなりません。つまり、採算ラインを正確に把握することは、「自分の収益物件がどの程度の空室までなら赤字にならないか」を知るための基準となるのです。
表面利回りと実質利回りの違い
採算ラインを見極める上で知っておくべきことが、2つの利回りの違いです。不動産投資でよく聞く「利回り」という用語について解説します。
表面利回りとは、物件が「常に満室である」と仮定した場合の年間家賃収入を、物件の購入価格で割った数値のこと。表面利回りの場合は、収益物件運用にかかる経費が考慮されていないため、あくまで目安として捉えましょう。
【表面利回り(%)= 年間家賃収入 ÷ 物件価格 × 100】
実質利回りとは、家賃収入から、固定資産税、都市計画税、管理会社への委託手数料、火災保険料、共用部の電気代や清掃費などの「実際に発生する年間運営経費」を差し引いた手残り利益(純収益)を、「物件価格+購入時の諸経費」で割った数値です。
【実質利回り(%)=(年間家賃収入-年間経費)÷(物件価格+購入時諸経費)×100】
不動産投資を始める際は、表面利回りだけで収支を考えるのではなく、経費を踏まえた実質利回りも想定し、実際にどれくらいの収益が手元に残るのかをシミュレーションしておくことが重要です。
神奈川の収益物件における採算ラインの考え方
神奈川県内では、地価が高い都市部(横浜駅周辺や武蔵小杉など)の収益物件は、物件価格が高いため実質利回りは低くなりがちです。しかし、これらのエリアは賃貸需要も高いため、エリア特性と採算ラインのバランスを見極めることが重要です。
郊外の場合は、物件価格が低ければ利回りは高くなりやすいです。一方で、賃貸需要はエリアごとに異なるため、需要に合った「空室率の低い物件選び」が大切です。
つまり、神奈川で収益物件を所有・運用するなら、利回りだけでなく、空室率(および入居率)を踏まえた試算が求められます。
損益分岐点の計算方法とシミュレーション例
損益分岐点となる入居率の計算式とは
まずは、「全戸数のうち、最低何%の部屋が埋まっていれば赤字にならずに経営できるか」を示す入居率を求めましょう。計算式は以下の通りです。
【損益分岐の入居率(%)=(年間運営諸経費+年間ローン返済額)÷満室想定時の家賃収入×100】
▼用語解説
- 年間運営諸経費: 管理費、固定資産税、修繕費などのランニングコストの合計
- 年間ローン返済額: 銀行に支払う元金と利息の合計額
- 満室想定時の家賃: 空室がゼロだった場合に入ってくる年間の家賃総額
つまり、物件の入居率が、この計算式で求めた%を下回ると、収支が赤字になります。損益分岐の入居率が低いほど、空室に対する耐久力がある投資であると判断できます。
【シミュレーション】アパート投資事例の損益分岐点計算
ここからは、具体的な数字を当てはめて計算してみましょう。以下のような条件の木造アパート(全10戸)を購入したと仮定します。
【物件シミュレーション条件】
- 物件価格:1億円
- 満室時想定家賃収入:800万円/年
- 年間運営諸経費:160万円(家賃収入の約20%と想定)
- 年間ローン返済額:420万円
【計算ステップ】
1.まずは年間の総支出を合計します。
運営諸経費 160万円 +ローン返済額 420万円 =580万円(年間総支出)
2.総支出を満室時の家賃収入で割り、100倍します。
損益分岐の入居率=580万円÷800万円×100 = 72.5%
【計算結果と分析】
この物件の損益分岐入居率は72.5%となります。全10室のアパートであれば、常に7室〜8室が入居していれば、アパートの家賃収入からローン返済と経費の支払えるという採算ラインです。逆に、空室が3室以上(入居率70%以下)に落ち込むと、オーナー自己資金から補填しなければならない赤字状態になってしまいます。
損益分岐の入居率が高い場合はどうする?
もしシミュレーションの結果、損益分岐入居率が85%や90%になってしまう物件は、常に満室に近い状態を維持し続けなければならず、赤字経営の危険が高まります。その場合は、運用経費を減らしたり、家賃を上げて家賃収入を増やしたりして、採算ラインを下げる対策が必要です。しかし、その対策の結果、入居者が離れて空室率が上がっては元も子もありません。
だからこそ、購入前にしっかりと数字によるシミュレーションを行い、「その物件を現実的に運用できるか」の採算ラインを可視化することが重要になるのです。
採算ラインを算出する際の注意点
損益分岐の入居率は、あくまで購入前の予想または現時点での収支に基づいた採算ラインに過ぎません。不動産投資は、購入してから手放すまでの長期事業です。長く保有するほど、運用中に状況が変わる可能性も大いにあります。そのため、将来起こり得る変化をあらかじめ採算ラインの計算に組み込んでおく必要があります。
ここでは、シミュレーション時に見落としがちな注意点を解説します。
減価償却費の終了と、デッドクロス
不動産投資において、帳簿上の数字と実際の手元資金(キャッシュフロー)のズレを生む要因の一つが税金。税金に関連して出てくる「減価償却費」と「デッドクロス」について解説します。
減価償却費とは、収益物件の建物部分の購入費用などを、買った年に一括で経費にするのではなく、国が定めた耐用年数に応じて毎年分割して経費計上できる会計上の仕組みのことです。実際の現金の支出はないのに経費として計上できるため、節税効果を生みます。
デッドクロスとは、ローンの元金返済額が、この減価償却費を上回ってしまった状態のことです。
築古の物件などを購入し減価償却期間が終わると、経費にできる金額が減ります。すると、帳簿上の利益に対し、所得税が増えることになります。これにより支出が増えるため、当初想定していた実質利回りが低下し、採算ラインが悪化する恐れがあります。
関連記事:減価償却とは?基本的な仕組みや計算方法、税制改正の影響について解説
大規模修繕への備え
建物の資産価値を維持するためには、毎月の管理費や清掃費とは別に、まとまった修繕費用が必要になります。
10年〜15年に一度のサイクルで、外壁塗装や給排水管の交換など、大規模な修繕が行われることがあります。いきなり大金が出ていくことを避けるため、あらかじめ家賃収入の中から「修繕積立金」として差し引いた上で実質利回りを計算し、より現実的な採算ラインを引いておくことが重要です。
関連記事:神奈川マンション投資|「見せかけの利回り」に騙されない!管理費・修繕積立金で読み解く収益物件の選び方
ローンを組む際の指標のひとつ「DSCR」とは
アパート投資の際に、融資を利用して物件を購入するなら知っておきたいのがDSCRです。これは、銀行が収益物件の安全性を客観的に評価するため、指標として用いられるものです。DSCR(借入金償還余裕率)とは Debt Service Coverage Ratioの略で、物件が生み出す純利益が、ローンの返済額に対して「何倍の余裕があるか」を示す指標のことです。
DSCRは以下の計算式で求められます。
【DSCR=年間の純利益(NOI)÷年間元利金返済額】
▼用語解説
- NOI(営業純利益): Net Operating Incomeの略で、年間の家賃収入から、空室による損失分と、実際の運営諸経費(固定資産税、管理費、修繕費、保険料など)を差し引いた「物件そのものが稼ぎ出す純粋な利益」のことです。ローン返済額や減価償却費を引く前の金額を指します。
- 年間元利金返済額: 銀行に毎月支払うローンの「元金」と「利息」を合わせた、1年間の総返済額。
DSCRは、1.0倍だと利益とローン返済額が同じ、つまり採算ラインギリギリの状態を指します。DSCRが1.0倍未満の場合、利益よりもローン返済額が多く、純利益だけではローンを返せない状態です。
一般的に、DSCRは1.2倍以上が目安と言われています。DSCRが1.2倍であれば、年間返済額に対して20%分の余裕がある状態を意味します。ただし、この数値はあくまで目安であり、判断は金融機関や物件条件などによっても異なります。
関連記事:収益物件とは?種類と特徴、資金計画に関わる基礎知識から、物件選びのポイントを解説
採算ラインを踏まえた収益物件選びのポイント
ここまで解説してきた採算ライン(損益分岐点)とDSCRの概要が分かると、資金繰りの面から物件選びを考えることができます。ここでは、アパート投資を始める際の物件選びのポイントを3つ紹介します。
1.採算ラインに余裕を持たせる資金計画
不動産投資を成功に導く第一歩は、不測の事態にも耐えられる現実的な資金計画を立てることです。
神奈川県の収益物件は、地方に比べて土地の価格が高いため、購入時の借入額(ローン)も大きくなる傾向があります。そのため、表面利回りだけで考えるのではなく、固定資産税や修繕費などのあらゆる経費を差し引いた実質利回りを使って、具体的な採算ライン(損益分岐点)を割り出すことが重要です。
「空室ができた」「税金が増えた」「突然修繕が発生した」など、家賃収入が減ったり、突然出費が発生したりという事態は起こり得ます。そうなった場合でも経営が破綻しないよう、現実的で余裕のある資金計画を立てましょう。
2.空室率を低く抑えて運用する
どんなに緻密な資金計画を立てても、肝心の家賃が入ってこなければ採算ラインを維持することはできません。毎月のローン返済や経費の支払いを安定させるためには、そもそも「空室が長引かない(=空室率を低く保てる)」収益物件を選ぶことが大切です。
「駅から近い」「築年数が浅く物件状態が良い」といった購入時点で条件が良い物件ももちろん入居希望者から魅力的に映りますが、「共用部の管理状態が良い」「宅配ボックスが導入された」「リフォームされた」といった、運用中に物件をより良くすることも手です。
関連記事:神奈川アパート投資|“設備投資の費用対効果”とは?おすすめ設備紹介
3.出口戦略まで含めて収支を考える
収益物件を購入する際、購入時や運用中の採算ラインを考えるのと同じくらい重要なのが、投資のゴールとなる「出口」をどう設定するかです。
出口戦略とは、 物件を購入後、一定期間運用して毎月の家賃収入(インカムゲイン)を得た後、建物の大規模修繕が必要になる前などの適切なタイミングで物件を売却し、売却益(キャピタルゲイン)を含めたトータルの利益を確定させる戦略のことです。神奈川県の主要駅周辺など、土地の資産価値が落ちにくく流動性(売りやすさ)が高いエリアでは、売却益を見据えた出口戦略を立てやすくなります。
または、長期保有することも戦略の一つです。 ローンを完済するまで、あるいは完済後も手放さずに長期間にわたってアパートを保有し続け、安定した家賃収入を得続ける戦略です。長期保有であれば、資産として相続することも可能です。ただし、長期保有の場合は築年数の経過に伴う家賃下落や修繕費の増加が避けられないため、長期的な運用計画が必要です。
投資の目的が「数年後の売却による手元資金の拡大」なのか、「長期的な安定収入」なのかによって、選ぶべき物件の基準は大きく変わります。具体的な出口戦略の考え方について、こちらの記事も併せてご覧ください。
関連記事:不動産投資の出口戦略|横浜・川崎・相模原を例に解説
まとめ|数字を味方につけたアパート投資
不動産投資では、物件条件・賃貸需要・資金状況など、複合的な判断が必要です。この記事では、アパート投資において知っておくべき採算ラインについて解説しました。
投資において数字は、重要な判断軸になります。賃貸需要が高いエリアでは、その分競合が多く、楽観的な資金計画の経営はすぐに立ち行かなくなってしまう恐れがあります。しかし、逆に言えば、事前にしっかりと採算ラインを引き、現実的なシミュレーションを行うことができれば、安定したアパート経営を目指しやすくなります。ぜひ今回解説した用語や計算式を、ご自身の投資計画づくりや物件選びにご活用ください。
他にも、不動産投資の基本について記事にまとめています。こちらもぜひご覧ください。
▶収益物件とは?種類と特徴、資金計画に関わる基礎知識から、物件選びのポイントを解説
アパート投資や収益物件の運用では、購入前の資金計画が投資成果を左右します。神奈川・東京エリアを中心に投資物件を提供しているイーカムでは、原則として自社所有・運用の物件を取り扱っているため、将来的なメンテナンスやリノベーション、管理業務、売却・買取に関してもサポートさせていただきます。自社一貫体制でアフターサポートも充実しているため、初めての投資物件選びも、安心してお任せいただけます。「不動産投資に興味はあるけれど不安や疑問がある」という方は、ぜひお気軽にご相談ください。
