減価償却とは?基本的な仕組みや計算方法、税制改正の影響について解説

不動産投資の節税対策として上げられる「減価償却」。聞いたことがあっても、実際に不動産投資でどう活用するのかはイメージしにくいものです。
この記事では、減価償却の基本的な仕組みと計算方法、税制改正の影響について解説します。これから不動産投資を考えている方はぜひ参考にしてみてください。
減価償却とは?不動産投資で押さえる基本
減価償却とは、建物や設備など、長く使う資産の購入費用を一度に経費にせず、耐用年数に応じて少しずつ経費計上していく制度のことです。資産の価値は時間とともに減っていきます。その減少分を「費用」として計上し、税金計算に反映させるのが減価償却の役割です。
不動産投資に限らず、企業が所有する機械や備品も、減価償却の仕組みを使って経費として計上することができます。個人の投資家だけでなく、企業の会計処理でも用いられる仕組み・用語です。
減価償却の対象となる資産
アパートやマンション等の不動産投資では、主に建物や設備が減価償却の対象となります。土地は時間経過とともに価値が減少しない資産のため、対象外とされています。
|
耐用年数とは
耐用年数とは、減価償却対象の資産の使用可能期間にあたるものです。耐用年数は省令で定められており、住宅用の建物の場合は、物件の構造によって下記のように決まっています。
|
物件(住宅)の構造 |
法定耐用年数 |
|
|
木造・合成樹脂造 |
22年 |
|
|
鉄骨鉄筋コンクリー ト造 |
47年 |
|
|
金属(鉄骨)造 |
4mm超 |
34年 |
|
3mm超、4mm以下 |
27年 |
|
|
3mm以下 |
19年 |
|
出典:主な減価償却資産の耐用年数表|国税庁
出典:No.2100 減価償却のあらまし|国税庁
減価償却の計算方法
減価償却の主な計算方法には「定額法」「定率法」「簡便法」の3つがあります。
定額法
定額法は、減価償却費を毎年同じ金額で計上する方法です。不動産投資の減価償却では、この定額法が用いられることが多いです。
|
【定額法計算式】 減価償却費=取得費用×定額法償却率
|
例えば、下記の条件で投資物件を購入した場合の、減価償却費を計算してみましょう。
|
土地+建物で5,000万円のアパートを購入
→減価償却費=3,000万円×0.046=138万円 |
「減価償却費として毎年138万円を経費として計上する」と算出できます。
定率法
定率法は、減価償却費が初年度は多く、年数が経つほど徐々に少なくなる計算方法です。ただし、定率法で計算するのは「設備のみ、かつ平成19年(2007年)3月31日以前に取得したものに限定されます。」平成19年(2007年)3月31日以降に取得した建物・設備は定率法で計算を行わず、定額法で計算を行います。
出典:No.2106 定額法と定率法による減価償却(平成19年4月1日以後に取得する場合)|国税庁
簡便法
中古で投資用不動産を取得した場合、新築状態から法定耐用年数が経過した状態で所有するため、経過年数を踏まえて耐用年数を算出します。
計算方法は、建物が法定耐用年数を超えているかどうかで変わります。
|
▼法定耐用年数以内の場合 耐用年数={法定耐用年数−築年数}+{築年数×20%} 例:法定耐用年数が22年の木造アパートを、築10年の時点で取得した場合 耐用年数={22年-10年}+{10年×20%}=12年+2年=14年 — — — — — — — — — — — — — ▼法定耐用年数を超えている場合 耐用年数=法定耐用年数×20% |
中古物件を購入する場合、残り耐用年数が短いため、短期間で大きな経費を計上できます。その代わり減価償却期間が短く、節税できる期間も短くなります。
逆に新築物件の場合は、耐用年数が長いため長期間安定して経費を計上できる一方で、年間の節税効果は下がります。
それぞれのメリット・デメリットがあるため、どちらが良いとは一概に言えません。投資物件をどのように運用していくか、長期的な見通しを持って判断するようにしましょう。
不動産投資での減価償却のメリット
では、減価償却を行うことで具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか?主な2つのメリットをご紹介します。
実際には支出が無くとも、経費として計上できる
減価償却費を計上することで、不動産取得にかかった費用は購入時の一括ではなく、毎年経費が発生していることになります。これにより、ローン返済は発生していても、減価償却による経費には現金支出がありません。会計上の利益を減らし、結果的に課税所得にかかる税金を圧縮することができます。
損益通算ができる
不動産所得で生じた減価償却により赤字になったとしても、給与所得や事業所得など他の所得と損益通算できます。これにより、トータルの課税対象額が減り、所得税や住民税を抑えることができます。
不動産投資での減価償却の注意点
土地は減価償却できない
「減価償却の定義」のところでも述べた通り、購入した不動産のうち、土地は減価償却の対象にはなりません。取得金額が土地+建物の合計だった場合、建物と土地の割合を正しく区分する必要があります。
売却時の税金が高くなる可能性がある
節税対策になる減価償却ですが、その一方で、不動産を売却する際に税金が高くなる可能性があります。不動産を売却して利益が発生した場合、「譲渡所得」という区分で計上します。この課税対象となる譲渡所得が多いほど、税金が高くなります。
課税対象譲渡所得額は、下記の計算式で求められます。
|
課税譲渡所得金額=収入金額−(取得費用+譲渡費用)−特別控除額
|
このように、減価償却費用の分、課税金額が増えてしまいます。減価償却で節税した分が、売却時の税金を高くする可能性もあります。
減価償却は、不動産所有時のメリットだけに注目するのではなく、その後への影響も理解することが大切です。
出典:No.1440 譲渡所得(土地や建物を譲渡したとき)|国税庁
減価償却に関わる税制改正
近年の税制改正で、企業向けの制度の延長や要件の見直しなど、減価償却に関わる変更が盛り込まれました。
※2025年8月現在の情報
少額減価償却資産の特例|令和6年度(2024年)税制改正
中小企業者等が30万円未満の減価償却資産を取得した場合に、合計300万円まで全額を即時償却できる制度です。改正により期限が延長され、2026年3月31日まで適用されます。これまでにも何度か延長されており、今後も期間が延長される可能性がありますが、2025年8月時点で終了まで1年を切っているため注意が必要です。
中小企業投資促進税制|令和7年度(2025年)税制改正
中小企業における設備投資を促進するため、対象となる機械などの設備を取得・製作した際に、取得価格の「30%の特別償却」または「7%の税額控除」が適用できる制度です。特別償却とは、通常の減価償却費に加えて「特別償却額」を計上する制度です。2025年税制改正で期間が2年延長され、2027年3月31日まで適用されます。
地域未来投資促進税制|令和7年度(2025年)税制改正
地域経済の成長につながる投資を後押しする制度である「地域未来投資促進税制」も税制改正で見直しされました。適用要件が追加・変更され、償却率が縮小されました。
今回改正された要件の一部をご紹介します。
▼改正要件(一部)
- 【従来】設備投資額が2,000万円以上→【改正後】設備投資額が1億円以上
- 【従来】設備投資額が前年度の減価償却費の20%以上→【改正後】設備投資額が前年度の減価償却費の25%以上
これにより、適用可能な設備投資が従来よりも限られることになるでしょう。
また、特別償却が40%から35%へ引き下げられました。
この制度の適用期限が3年間延長され、2028年3月31日まで適用されます。
出典:税制支援|経済産業省
税制改正が不動産投資に与える影響
今回ご紹介した減価償却に関わる税制改正は、主に企業向けの内容のため、個人の賃貸オーナーへの直接的な影響は少ないと考えられます。ただし、税制改正では、減価償却に限らず様々な税に関する制度改正が行われます。2025年の税制改正では、所得税に関するいわゆる「103万円の壁」が引き上げられました。これにより手取り額が増え、賃貸アパート・マンションの入居希望者が家賃に回せるお金が増える可能性も考えられます。令和8年度(2026年)以降も、税制改正への注目が必要です。
まとめ|減価償却を味方にした投資戦略を立てましょう
減価償却は、不動産投資における節税対策のひとつです。現金支出を伴わずに経費を増やせるため、キャッシュフローを改善し、税金を抑えることができます。ただし、不動産売却時の税金への影響など注意点もあるため、仕組みへの正しい理解が重要です。
また、毎年行われる税制改正が減価償却、ひいては不動産投資へ影響することが考えられます。投資家・オーナーへの直接的な影響だけでなく、不動産を借りる消費者側に影響する可能性もあるため、賃貸需要を見極める上でも、2026年以降も動向を見守りましょう。
投資を成功させる鍵は、物件選びの目線と信頼できるパートナー選びにあります。イーカムでは神奈川・東京エリアを中心に、自社一貫体制による高品質な投資物件をご提供するとともに、購入後の管理サポートも充実させています。不動産投資に興味はあるけれど不安や疑問をお持ちの方は、ぜひお気軽にご相談ください。
